大阪大学・蛋白質研究所 蛋白質解析先端研究センター・分子創製学研究室
岩崎憲治
解析拠点・解析領域において特に相関構造解析業務を行っています。相関構造解析とは、X線結晶構造解析、NMR、電子顕微鏡、計算機科学、データベース、光学顕微鏡等様々な構造解析手法を組み合わせ、それらの情報をインテグレートさせることで単独手法では得られない、より高次の構造情報を得る解析手法です。ハイブリッドアプローチとも呼ばれる本手法のうち、特に透過型電子顕微鏡を軸に据え、二次元構造情報から三次元まで幅広く扱っています。高度化では、分担機関の原子力機構松本淳博士とともに開発した2Dハイブリッド法によって、どの構造解析手法でも得ることが困難な巨大鎖状分子の構造を得ることに成功しました(PNAS, 2014)。
本手法では、いわゆる単なる電顕写真であるスナップショットを元に、あるいは二次元の平均化画像を元に、そこに写されている分子の原子構造を予測することができます。元々、機能と相関のある分子のコンフォメーション変化を解析するために開発した手法です。このような手法は、単なる電顕の構造解析?いわゆる単粒子解析法?の延長ではなく、計算機科学と電顕の相関をとることで初めて開発できました。一方、ここ2年で起きた電子顕微鏡の大革命とも呼ばれる電子直接検出器を用いた高分解能解析も高度化の一環として行っています。2014年から阪大・蛋白研で稼働を始めた電子直接検出器とエネルギーフィルターを備えたクライオ電子顕微鏡は、近原子分解能解析の能力を秘めているだけではありません。その従来とは比較にならない高解像度の画像取得機能を生かし、ドラッグデリバリーシステムにつながる基礎研究にも役立ちました。現在、このように複合体分子の高分解能解析から、コンフォメーション変化の解析、高解像度のスナップショット等までを支援・コンサルティング業務として開始しています。
電子顕微鏡への創薬関係者からの期待は多く、本年度中に、より高効率で高分解能撮影できる最高性能のクライオ電子顕微鏡が本事業を通して阪大・蛋白研に導入されます。これまでとは比較にならない、より多くの研究者にクライオ電子顕微鏡の門戸が開かれるでしょう。