本事業は、6つの研究領域別ユニットから構成され、プログラムスーパーバイザー(PS)のもと4名のプログラムオフィサー(PO)が事業の運営を担う体制にしています。
ここに各課題からの代表者(連携推進担当者)、外部有識者とAMED事務局が加わった「BINDS連携推進オフィス」を設置し、BINDS事業の司令塔として、「Fast Track Project」等の重点プロジェクトの設定を通してユニット横断的な支援の仕組みを体系的に整備し、課題間/ユニット間連携を強力に推進して、高度な研究成果創出を目指します。
特に、感染症対策研究支援、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進、非競争領域における産学連携推進、人材育成と国際連携推進の5つを事業の重点課題として設定し、積極的に取り組んで参ります。
国立大学法人大阪大学
大学院薬学研究科
教授
井上 豪
新型コロナウイルス感染症は私たちの生活を一変させました。感染者は世界で4.8億人を超え、死者も612万人を数えています(2022年3月28日現在)。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、2012年のMERS(中東呼吸器症候群)と比較してもその被害は格段に大きなものとなりました。物流・人流が世界規模に拡大している現代では新興・再興感染症とはこれからも闘わねばならない課題です。2021年のG7サミットでは感染症危機に備えてワクチンの開発期間を100日以内に短縮するという目標も打ち出され、各国の連携強化も強く意識されています。そんな中でこの生命科学・創薬研究支援基盤事業が開始されます。
創薬は、医学・薬学・生化学・有機化学・薬理学・蛋白質科学・遺伝学・熱力学・構造科学・計算科学など、様々な領域の学際融合領域に位置し、基礎から応用まで幅も広く、1人の研究者が行えるものでは決してありません。また、今回のような新興・再興感染症に即座に対応するには平時からの連携が重要であることも強く認識させられました。
従って本事業では、前回の創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)事業における、アカデミア発の優れた創薬研究の「支援」と、より専門性の高い支援を提供するための「高度化」を図るという基本精神を踏襲しながら、平時からの創薬研究をチーム全体で支援するような取り組みも進めて参りたいと思います。そのために構造解析ユニット、発現・機能解析ユニット、インシリコ解析ユニット、ヒット化合物創出ユニット、モダリティ探索ユニット、薬効・安全性評価ユニットが互いに連携してサポートするための調整機能を有した会議体も新設して支援します。
新しいBINDS事業がより深化し、広い意味でのライフサイエンス研究が盛んになることを期待しています。皆様のご協力を心からお願い致します。
国立大学法人東北大学
オープンイノベーション戦略機構
特任教授、統括クリエイティブマネージャー
内田 渡
今日の創薬は、科学技術の革新に伴う創薬基盤研究の発展によって飛躍的な成長を遂げて来ました。 そのため、こうした変化を的確に予見し、その先を見据えた創薬基盤やプロセスをいち早く構築し提供していくことこそが本事業の使命といえます。 特に、基盤技術の高度化に伴い、創薬研究もこれまでの自前主義型モデルから水平分業型モデルへと転換し、今日では、アカデミアが磨き上げた先端・独創的なシーズ、並びに革新的な技術への依存と期待が極めて大きなものとなっています。 長年に渡り、製薬企業にて新薬の研究開発に携わってきた経験を活かし、アカデミア発の創薬を1日でも早く社会へ実用化できるように、我が国トップの研究チームと一丸になって、生命科学現象の解明に加え、スクリーニングシステムの高度化・効率化、並びにヒトへの予見性の高度化など、更にはそれらの支援活動を通じて、日本発の革新的な創薬の加速・推進の一翼を担ってまいります。
特定非営利活動法人情報計算化学生物学会
CBI研究機構 量子構造生命科学研究所
所長
上村 みどり
前BINDS事業に引き続きましてPOを務めることになりました。 前BINDSでは、特に、台数で米国、中国に著しい遅れをとっておりましたCryo-EMのハイエンド機を文部科学省とタッグを組むことで全国に拡充できたことは大きな実績でありました。 一方、科学技術の課題は、ハードウェアの問題だけでなく、人材を含む成果を最大化できる支援体制が大切であります。 本BINDS事業においては、様々な支援申請されてくる対象に対して連携できる柔軟性が必要になります。 自分の興味の対象だけでなく、支援課題に真摯に対応することで、多くのメリットがあると思います。 本BINDS事業の5年後の終了時には新たに加わった分野も含む形で、本事業に関わったすべての研究者がどのような対象に対しても多分野の様々な技術を自在に、最適の課題攻略法をデザインできるようになることが最終目的です。 それこそが、我が国の科学技術のプレゼンスを世界に示すような研究につながると確信しております。
日本女子大学 特任教授
東京大学 特任教授
清水 謙多郎
計算科学の重要性は創薬、生命科学の分野でますます増大しており、理論およびデータ科学、さらにそれらを統合したアプローチからの取り組みが行われています。 AIが普及し、その利用は当然のものになっていますが、予測精度を高めることはもちろん、どうしてそうした結果が得られるのか説明できること、さらに新しいものを作り出すことが重要となってきています。 今後5年間、計算科学、データ科学は飛躍的な進歩を遂げることは間違いありません。 本事業では、創薬、生命科学の分野にそれらを生かし、また、本事業発の革新的な技術の開発、高度化を行って分野の発展に貢献できれば、と思います。 本事業からBINDS司令塔・調整機能が加わり、課題担当者の方々と協力し、ユニット間の密接な連携、支援者との効果的なつながりをもって事業に取り組みたいと思います。
国立大学法人東京大学
医科学研究所 国際ワクチンデザインセンターヒト免疫学分野
反町 典子
自身で自己免疫疾患の新規治療薬探索に取り組む中で、アカデミア創薬に必要な視点や道筋を学ばせていただきました。 現在の日本は、アカデミアが優れたシーズを多数保有しているにもかかわらず、実用化が難しい状況にあります。 さらに、研究者人口の減少や国内企業の開発力低下により、日本の科学研究全般において競争力の低下が大きな課題となっています。 本事業で世界トップレベルの技術を有するプラットフォームをより多くの皆様に有効活用していただくことで、医薬品開発の視点を備えた人材の育成とアカデミア創薬の活性化を図りつつ、日本の基礎研究と開発研究、両軸での研究力および競争力の底上げに少しでも貢献できますように微力ながら取り組ませていただきます。 どうぞよろしくお願い申し上げます。