A1-10 タンパク質X線自由電子レーザーによる構造解析支援

ユニット名

構造解析ユニット

支援担当者

所属 ① 東北大学 多元物質科学研究所
② 高輝度光科学研究センター
③ 理化学研究所 放射光科学研究センター
氏名 ① 南後 恵理子
② 奥村 英夫
③ 吾郷 日出夫
AMED
事業
課題名 生命科学と創薬研究に向けた相関構造解析プラットフォームによる支援と高度化
代表機関 理化学研究所
代表者 山本 雅貴

支援技術のキーワード

X線自由電子レーザー、シリアルフェムト秒結晶構造解析、時分割実験、分子動画解析、室温構造解析

支援技術の概要

X線自由電子レーザー(XFEL)を用いたシリアルフェムト秒結晶構造解析(SFX)では、微結晶を凍結させることなく、室温下で連続的にXFEL照射域に輸送して、個々の結晶からの回折像を得る。高強度フェムト秒X線レーザーを用いることから、1)放射線の影響が顕在化する前の状態を捉えることができる、2)室温構造を得ることができるといった利点がある。また、タンパク質が機能する瞬間の構造変化や関連する化学反応を捉えることができ、高い時間・空間分解能での動的構造情報を得ることが可能である。また、測定目的や結晶の状態によりFixed targetによる実験にも対応可能である。

主な支援内容としては、XFEL施設SACLAにおけるSFX実験のコンサルティング(試料調製法、実験計画など)、ビームタイム実験支援、構造解析支援である。また、SPring-8のビームラインを使用し、SFXで用いる微小結晶の評価や、現在立ち上げ中のミリ秒以上の時間領域の時分割実験など、XFEL施設SACLAと連携した支援も可能である。

支援技術の利用例

今までに、本技術により室温構造解析例としては多剤排出トランスポーター(CmABCB1)、ドーパミンD2受容体、オレキシン2受容体などの解析が行われてきた(文献1,2,3)。時分割実験による動的構造解析の例としては、光感受性試料を中心に微生物型ロドプシン各種(4,5,6)、光化学系II(7,8)、フィトクロム(9)、DNAフォトリアーゼ(10)などの時分割研究が行われている。

[1] Pan D, et al., IUCrJ (2021) 9, 134-145
[2] Im, D., et al.,Nat Commun (2020) 11, 6442
[3] Suno, R., et al., Structure (2018) 26, 7-19
[4] Hosaka, T., et al., PNAS (2022) 119, e2117433119
[5] Oda, K., et al., ELife (2021) 10, 62389
[6] Nango, E., et al., Science (2016) 354, 1552-1557
[7] Li, H., et al., IUCrJ (2021) 8, 431-443
[8] Suga, M., et al., Nature (2017) 543, 131-135
[9] Claesson, E., et al., Elife (2020) 9, 53514
[10] Maestre-Reyna, M., et al., Nat. Chem. (2022) 14, 677-685

支援担当者の研究概要

① 南後 恵理子
2013年よりX線自由電子レーザー(XFEL)を用いた結晶構造解析法の開発に取り組み、XFEL施設SACLAと協力して結晶輸送装置などの基盤技術を構築してきた(文献11-14など)。また、時分割実験のための技術や装置開発を進め、実際に光駆動型プロトンポンプであるバクテリオロドプシンを用いてナノ秒からミリ秒における構造変化を捉えることに成功した(文献6)。今日では光感受性試料を対象としたポンププローブ型時分割実験手法は確立されており、SACLAにて開発した装置や技術が用いられている。現在、光感受性でない試料を対象とした二液混合法など新たな時分割実験法の開発に取り組むと共に本技術を汎用化するべく技術開発を行っている。

② 奥村 英夫
放射光施設SPring-8において、結晶化プレート中のタンパク質結晶に直接X線を照射し、室温で回折測定を行うin situ回折測定装置および結晶化プレート自動搬送系の構築、測定技術開発を行ってきた(文献15)。また、結晶中のタンパク質の反応中間状態の確認をするための顕微分光装置の構築にも携わってきた。

③ 吾郷 日出夫
放射光施設SPring-8において膜タンパク質を中心とした試料調製・結晶から構造解析に取組み、世界で初めて遺伝子工学的に生産したヒト由来膜タンパク質LTC4合成酵素の構造解析に成功するなど、高難度タンパク質の結晶構造解析の試料調製から構造解析にまで幅広く取り組んでいる(文献16)。2012年以降はX線自由電子レーザー(XFEL)を用いた無損傷・動的結晶構造解析にも取組み、Fixed targetによるSF-ROX法の開発を主導して、チトクロム酸化酵素や光化学系IIの無損傷高分解能結晶構造解析を成功させた(文献17、18)。

[11] Shimazua, Y., et al., J. Appl. Cryst. (2019) 52, 1280-1288
[12] Kubo, M., et al., Synchrotron Radiat. (2017) 24, 1086-1091
[13] Tono, K., J. et al., Synchrotron Radiat. (2015) 22, 532-537
[14] Sugahara, M., et al., Nat. Methods (2015) 12, 61-63
[15] Okumura, H., et al., Acta Cryst. (2022) F78, 241-251
[16] Ago, H., et al., Nature (2007) 448, 609-612
[17] Hirata, K., et al., Nat. Methods (2014) 11, 734-736
[18] Suga, M., et al., Nature (2015) 517, 99-103

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