A1-13 蛋白研NMR解析包括支援

ユニット名

構造解析ユニット

支援担当者

所属 ① 大阪大学 蛋白質研究所
② 大阪大学 蛋白質研究所
③ 大阪大学 蛋白質研究所
氏名 ① 藤原 敏道
② 宮ノ入 洋平
③ 杉木 俊彦
AMED
事業
課題名 生命科学と創薬研究に向けた相関構造解析プラットフォームによる支援と高度化
代表機関 理化学研究所
代表者 山本 雅貴

支援技術のキーワード

溶液NMR、SAIL法、19F化合物スクリーニング、Deep-MagRO、固体NMR

支援技術の概要

・超高磁場NMR装置群による高感度・高分解能な立体構造・分子間相互作用・動的ダイナミクスの解析:国内最高レベルの感度を誇る溶液950MHzおよび固体700MHz NMR装置をはじめ、幅広い磁場強度の先端的・高感度NMR装置のラインナップで生体分子の構造・動的ならびに相互作用の実験・解析等を支援する。

・最適な安定同位体標識法によるNMR解析:目的タンパク質中の特定の原子にのみ安定同位体標識を施す先端的NMR試料調製・測定技術であるSAIL法により、高分子量・高難度タンパク質のNMR解析を支援する。

・NMRによるタンパク質構造の立体構造決定:NMRスペクトルの帰属から立体構造解析までをパイプライン化・自動化した先端技術(Deep-MagRO:阪大独自で開発)で、目的タンパク質の立体構造解析を支援する。

・独自に構築した19F標識フラグメントライブラリーによるスループットなリガンドスクリーニング:60検体収容可能なオートサンプラーを装備した溶液400MHz NMR装置と、当グループが独自に開発した19F標識フラグメント化合物ライブラリーを用いて、目的タンパク質に結合する未知化合物の探索を支援する。

・In-cell NMR法による細胞内タンパク質の構造・動態解析:大腸菌や哺乳動物細胞等の生きた細胞内における目的タンパク質の立体構造および分子間相互作用解析をin-cell NMR技術で支援する。

・溶媒の自動還流システムによるリアルタイム溶液NMR観測:Insight/Cell (Bruker) モジュールを活用した溶液NMR実験により、化学反応、タンパク質-薬剤相互作用、in-cell NMR実験との技術融合による細胞応答や代謝等のリアルタイムNMR観測とその解析を支援する。

・新たなNMR測定技術を利用したタンパク質の動的多型構造の解析:溶液NMR法では、弱い相互作用に伴う過渡的複合体や、多型構造間の動態を定量的に観測することが出来る。圧力可変装置や試料攪拌装置を取り入れた新しい溶液NMR測定(高圧NMR, Rheology NMR)により、タンパク質の準安定構造の高感度観測ならびに多型構造間の動態解析を支援する。

・高磁場極低温DNP法による超高感度固体NMR解析:高磁場DNPでは、高磁場で核スピンと同時に電子スピンを共鳴させてNMRの感度を約1000倍向上させられる。この方法で微量試料や高分子量タンパク質、天然存在比の生体試料について、構造や相互作用の解析を支援する。

・超高速マジック角試料回転法による高分解能高感度1H-NMR解析:生体試料を50kHz以上で回転させることにより,1mg以下の固体状態の試料についてこれまで測定が難しかった1H-NMRを高感度に測定できるようにする。この方法で、13C,15N-NMRを1H-NMRを通じて高感度に測定して、生体分子の構造と相互作用解析を支援する。

支援技術の利用例

・タンパク質-膜タンパク質相互作用解析:膜タンパク質を脂質二重膜に再構成したnanodiscを調製し、性状を31P NMRで確認するとともに、タンパク質リガンドとの相互作用を超高磁場溶液NMR測定により解析した。

・タンパク質-薬剤相互作用解析:マラリア感染に関わるタンパク質の立体構造決定、19F化合物スクリーニングによる新規リガンド化合物の同定、タンパク質と新規リガンド化合物の相互作用部位および結合親和性の同定を、全て溶液NMR実験で行い、それら全てを約1週間のうちに達成した。

・SAIL法による高難度タンパク質の高分解能溶液NMR解析:通常では溶液NMR解析が困難な高分子量タンパク質、膜タンパク質、抗体などの目的の部位にオーダーメイドで安定同位体標識を施し、相互作用領域の特定ならびにアミノ酸残基側鎖の動態変化を解析した。

・タンパク質の立体構造解析:遺伝病の発症を引き起こす変異体タンパク質の立体構造解析を網羅的に行った。

・固体NMRを用いたタンパク質相互作用および構造解析:膜タンパク質Nav1.4とアゴニストとの相互作用部位の解析、膜タンパク質pHtrIIの膜貫通領域のタンパク質間相互作用、膜ペプチドMPXと脂質膜との相互作用部位決定、βIIミクログロブリンのアミロイド構造の解析等を行った。

支援担当者の研究概要

上記の支援の概要および利用例に加えて、次のような研究開発に取り組んでいる。
・タンパク質動態の高感度・定量解析を可能にする溶液NMR実験技術の開発:これまでに、SAIL法を駆使して、分子量1000 kDaに及ぶタンパク質複合体についても高感度かつ先鋭的な溶液NMRシグナルを獲得することに成功し、溶液NMRの解析対象を大幅に拡大してきた。今後、膜タンパク質や繊維形成タンパク質といった高難度タンパク質の立体構造解析や動態解析を進めていくために、様々な安定同位体標識パターンを有する新しいSAILアミノ酸の開発を進めている。また、高圧NMR測定やRheology NMR測定とSAIL法を組み合わせることで、高感度かつ定量的なタンパク質動態解析法の新規開発も進めている。

・”Hit to lead” 研究の支援へ向けて ― ヒット化合物-目的タンパク質複合体の立体構造情報の取得へ向けた手法開発 ―:19F化合物スクリーニングのNMR実験で得られたヒット化合物を合成展開し、創薬候補化合物へと成熟させるには、目的タンパク質とヒット化合物の複合体の立体構造情報を得ることが不可欠である。その情報を正確・迅速に得ることを可能にする先端的NMR実験法の開発を進めている。

・超高感度NMR法の開発と応用:高磁場DNP-NMR法を高磁場極低温で行う装置の開発とその応用を行っている。これまでNMR感度を1000倍向上させた。さらに10000倍まで向上させる技術を開発している。これによりGPCRのNMR相互作用解析が1μgの試料で可能になる。

大阪大学蛋白質研究所 機能構造計測学研究室(藤原敏道教授)
http://www.protein.osaka-u.ac.jp/biophys/bussei.html

大阪大学蛋白質研究所NMR装置群
https://nmrfacility.info/

大阪大学蛋白質研究所 高磁場NMR分光学研究室(宮ノ入洋平准教授)
https://nmrfacility.info/

次世代NMRワーキンググループ(宮ノ入洋平准教授)
https://nextnmr.jp/

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