A5-1 タンパク質クライオ電子顕微鏡構造解析支援

ユニット名

構造解析ユニット

支援担当者

所属 ① 自然科学研究機構 生命創成探究センター
② 自然科学研究機構 生命創成探究センター
③ 自然科学研究機構 生命創成探究センター
氏名 ① 村田 和義
② 加藤 晃一
③ 奥村 久士
AMED
事業
課題名 生命分子動態機能解析システムによる創薬標的探索をめざした研究支援
代表機関 自然科学研究機構
代表者 村田 和義

支援技術のキーワード

クライオ電子顕微鏡、単粒子解析、電子線トモグラフィー、⽣命分⼦動態機能解析システム

支援技術の概要

自然科学研究機構・生命創成探究センターでは、R3年度に冷陰極電子銃(C-FEG)と自社製エネルギーフィルター(Selectris X)を搭載した世界最高性能を誇る300kVクライオ電子顕微鏡(クライオ電顕)(TITAN Krios G4、Thermo Fisher Scientific(TFS)社)を導入し、これまでクライオEMネットワークのF1サイトとして行ってきた200kVクライオ電顕を用いた高分解能グリッドスクリーニングと合わせることで、シームレスに原子分解能でのタンパク質構造解析が行える環境を整備した。得られた画像データは高速演算に対応したGPU計算機に順次転送され、cryoSPARCを用いたオンザフライ解析システムにより、リアルタイムでその状況を把握することができる。さらに画像データは解析環境の整ったクラウドサーバーにも保存され、ユーザーはそこにログインすることで、遠隔からでも構造解析を行なうことができる。

さらに同センターでは、300kVクライオ電顕と合わせて導入したCryo-FIB SEM(Aquilos2、TFS社)を用いることで、凍結細胞試料から直接切り出したその場(細胞内)でのタンパク質の動態構造解析を行なうことができる。この装置には蛍光顕微鏡ユニット(iFLM)が搭載されており、細胞内の目的の場所をピンポイントで切り出すことが可能である。

また、本設備はバイオセーフティーレベル2(BLS2)にも対応し、感染症に関わるバクテリアやウイルスなどの構造研究も行なうことができる。

本研究支援では、これらのクライオ電子顕微鏡システムを同センターが運用する高分解能NMR、Native MS、生高速AFM、スーパーコンピュータ、体分子相互作用計測装置等からなる「生命分子動態機能解析システム」へ組み込むことで、タンパク質の高分解能構造解析だけでなく、その動的な分子間相互作用ネットワークにおける機能構造解析を統合的に行える独創的な研究支援体制を整えている。

また、得られた創薬化合物に対しての薬効・安全性評価および糖鎖解析に関する研究支援を名古屋市立大学創薬基盤科学研究所の協力で行い、さらにTFS社の協力で、トモグラフィーのよるその場タンパク質構造解析の高分解能化と高難度の試料のクライオ電子顕微鏡構造解析についての共同研究にも取り組む。

支援技術の利用例

● ノロウイルスは感染前に粒子の形を変化させることを発見

ノロウイルスが2通りの構造をもち、その構造を切り替えることによって細胞に感染できるようになることを発見した。クライオ電子顕微鏡を用いてこれら2通りのノロウイルスの粒子構造を解析することにより、構造変化の分子メカニズムを明らかにした。
Song et al. PLOS Pathogens 16(7), e1008619, 2020.

● プロテアソームα7サブユニットが作るダブルリングの構造揺らぎを解明

プロテアソームの構成サブユニットのうちα7は単独でプロテアソームに似た二重のリング構造を形成する。本研究では、このα7二重リングの機能を明らかにするため、その溶液中での構造をクライオ電子顕微鏡単粒子解析により調べた。結果、α7二重リングは、主にリングの重なり方の異なる3種類の構造を示すことが明らかになった。
Song et al. Int J Mol Sci 22(9), 4519, 2021.

  • 新型コロナウイルス感染症(ハムスターモデル)の治療に成功
  • 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功し、ハムスターモデルにおいて、経鼻投与することにより、肺におけるウイルス増殖を抑制することを明らかにした。さらに、新型コロナウイルススパイク蛋白質と本VHHの結合様式をクライオ電子顕微鏡による解析によって明らかにした。
    Haga K et al. PLoS Pathog 17(10), e1009542, 2021.

    支援担当者の研究概要

    URL: https://www.nips.ac.jp/struct/

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