B2-1 1細胞遺伝子発現解析

ユニット名

発現・機能解析ユニット

支援担当者

所属 ① 東京大学 先端科学技術研究センター
② 東京大学 医学部附属病院
氏名 ① 油谷 浩幸
② 野村 征太郎
AMED
事業
課題名 先端的1細胞オミックス・エピトランスクリプトーム解析の支援と高度化
代表機関 東京大学
代表者 油谷 浩幸

支援技術のキーワード

1細胞/核遺伝子発現解析、1細胞/核エピゲノム解析、空間的トランスクリプトーム解析、マルチプレックス免疫染色

支援技術の概要

1細胞オミックス解析は生命科学研究の進め方を根本から変えた。これまでは細胞集団の解析から立てられた仮説に基づいて行われる研究が中心であったが、1細胞オミックス解析技術の確立・発展により、発生・成長・疾患・老化といった臓器・個体レベルの生命現象において細胞レベルの網羅的な分子挙動を捉えることが可能となった。しかしながら、様々な個体・臓器・培養細胞・オルガノイドなどから詳細な1細胞オミックス情報を取得するにはそれぞれに異なった工夫が必要である。支援担当者らは、これら様々な検体を用いて(1)1細胞レベルの遺伝子発現とエピゲノムの関連解析(2)組織から抽出した核を用いた1細胞解析(3)1分子RNA in situ hybridization・マルチプレックス免疫染色などによる空間的解析、といった先端的な1細胞オミックス解析技術を確立してきた。そこで本支援では、これまでに支援担当者らが構築してきた先端的1細胞オミックス解析技術を外部研究者の支援に提供することで、わが国におけるライフサイエンス研究の発展を目指し、国際競争力の高い研究成果を世界に発信することを目指している。

支援技術の利用例

  1. 組織検体・培養細胞・オルガノイドなどから単離した細胞および核を用いた1細胞/核RNA-seq解析・ 1細胞/核ATAC-seq・1細胞/核RNA/ATACマルチオーム解析・1細胞アイソフォーム解析
  2. 組織検体を用いた空間的トランスクリプトーム解析・1分子RNA in situ hybridization解析
  3. 組織検体を用いたマルチプレックス免疫染色解析

支援担当者の研究概要

支援担当者らは、疾患モデル動物やヒト心不全患者の心臓から単離した心筋細胞をSmart-seq2(Picelli et al. Nat Protoc. 2014)によって1細胞遺伝子発現解析する技術を世界で初めて確立して心不全の病態解明に役立ててきた(Nomura, Aburatani et al. Nat Commun. 2018)。さらに、1分子RNA in situ hybridizationによって組織における遺伝子発現の空間的不均一性を明らかにし(Nomura, Aburatani et al. J Mol Cell Cardiol. 2019)、1細胞分子病理解析によって疾患層別化を実現し(Nomura, Aburatani et al. JACC Basic Transl Sci. 2019)、1細胞遺伝子発現解析で致死的不整脈の原因であるドパミンD1受容体陽性心筋細胞を同定してきた(Yamaguchi, Nomura et al. Nat Commun. 2020)。またChromium X(10x Genomics)を導入して1細胞解析の対象細胞数を100万細胞程度に増やすことに成功するとともに、1細胞から複数のオミックス情報を抽出して統合解析する技術(1細胞マルチオーム解析)やロングリードシークエンスによるアイソフォーム解析技術も確立している。

またVisium(10x Genomics)を用いた組織における空間的トランスクリプトーム解析技術を確立して、心筋梗塞後の時空間的な遺伝子発現解析を行い、血液プロテオームとの統合解析から心不全の重症化因子IGFBP7を同定した(Nomura, Aburatani et al. Nat Commun. 2022)。また数10~100種類程度の抗体を用いたマルチプレックス免疫染色技術(PhenoCycler-Fusion(Akoya Biosciences))を確立し、1細胞レベルの空間的解析が可能となっている。

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