B5-2 薬物候補化合物の代謝多様性解析

ユニット名

発現・機能解析ユニット

支援担当者

所属 ① 東北大学 大学院薬学研究科
氏名 ① 平塚 真弘
AMED
事業
課題名 マルチオミックス・ヒューマンバイオロジー解析基盤の高度化と支援
代表機関 東北大学
代表者 木下 賢吾

支援技術のキーワード

In-vitro層別化活性評価、薬物代謝酵素、シトクロムP450、遺伝子多型、哺乳動物細胞発現系

支援技術の概要

  • 既に構築済みの12種のCYP分子種(CYP1A2, CYP2A6, CYP2A13, CYP2B6,CYP2C8, CYP2C9, CYP2C19, CYP2D6, CYP2E1, CYP3A4, CYP3A5,CYP4F2)の野生型およびToMMo 8.3KJPNで同定されたミスセンスバリアントを網羅したタンパク質ライブラリを活用し、組換えバリアントタンパク質を提供する。
  • その他のCYPや薬物代謝酵素について、新規のアミノ酸変異を導入したタンパク質の発現を支援する。
  • 薬物代謝酵素の組換えタンパク質の機能変化解析として、酵素反応速度論的パラメータ(Km, Vmax, 固有クリアランス)測定法を確立しており、支援希望者が基質薬物および代謝物とその同位体を提供し、機能活性をこれらライブラリで網羅的に定量する支援も行う。
  • 支援技術の利用例

  • 各CYP分子種の遺伝的バリアントにおける酵素機能変化解析
  • Heterologous expression of high-activity cytochrome P450 in mammalian cells. Kumondai M, Hishinuma E, Gutierrez Rico EM, Ito A, Nakanishi Y, Saigusa D, Hirasawa N, Hiratsuka M. Sci. Rep., 10:14193 (2020)

    Functional characterization of 40 CYP3A4 variants by assessing midazolam 1′-hydroxylation and testosterone 6β-hydroxylation. Kumondai M, Gutierrez Rico EM, Hishinuma E, Ueda A, Saito S, Saigusa D, Tadaka S, Kinoshita K, Nakayoshi T, Oda A, Abe A, Maekawa M, Mano N, Hirasawa N, Hiratsuka M. Drug Metab. Dispos., 49:212-220 (2021)

    Functional assessment of 12 rare allelic CYP2C9 variants identified in a population of 4773 Japanese individuals. Kumondai M, Gutierrez Rico EM, Hishinuma E, Ueda A, Saito S, Tadaka S, Kinoshita K, Nakayoshi T, Oda A, Maekawa M, Mano N, Hirasawa N, Hiratsuka M. J. Pers. Med., 11:94 (2021)

    Functional characterization of 21 rare allelic CYP1A2 variants identified in a population of 4773 Japanese individuals by assessing phenacetin O-deethylation. Kumondai M, Gutierrez Rico EM, Hishinuma E, Nakanishi Y, Yamazaki S, Ueda A, Saito S, Tadaka S, Kinoshita K, Saigusa D, Nakayoshi T, Oda A, Hirasawa N, Hiratsuka M. J. Pers. Med., 11:690 (2021)

  • CYP以外の薬物代謝酵素の遺伝的バリアントにおける酵素機能変化解析
  • Functional characterization of 21 allelic variants of dihydropyrimidinase. Hishinuma E, Akai F, Narita Y, Maekawa M, Yamaguchi H, Mano N, Oda A, Hirasawa N, Hiratsuka M. Biochem. Pharmacol., 143:118-128 (2017)

    Functional characterization of 21 allelic variants of dihydropyrimidine dehydrogenase identified in 1,070 Japanese individuals. Hishinuma E, Narita Y, Saito S, Maekawa M, Akai F, Nakanishi Y, Yasuda J, Nagasaki M, Yamamoto M, Yamaguchi H, Mano N, Hirasawa N, Hiratsuka M. Drug Metab. Dispos., 46:1083-1090 (2018)

    支援担当者の研究概要

     医薬品の効果や副作用発現には遺伝的な個人差が存在し、患者個々に効果的かつ安全性の高い薬物療法を実施するための、予測性の高いゲノムバイオマーカーの同定が求められている。一方で、遺伝子配列が複数カ所異なっていてもタンパク質の機能には全く影響がない場合や、逆に遺伝子上の一塩基多型のみでタンパク質の機能が著しく変化する場合もあり、ゲノム解析だけでなくタンパク質の機能変化解析が極めて重要である。特に、薬物代謝酵素は医薬品の体内動態に関わる最も重要な分子であり、それらの遺伝的バリアントがヒトの薬効や副作用発現の個人差に大きく影響すると考えられている。しかし、薬物代謝酵素の遺伝的バリアントが、実際にどの程度機能変化を起こすかについては不明な部分が多く、ファーマコゲノミクス(PGx)検査が臨床で実施されているものは一部にすぎない。したがって、個人のゲノム解析情報が蓄積しても、それらに由来するバリアント酵素の機能変化が正確に評価・予測されなくては、PGx検査のゲノム医療への応用は困難を極める。
    私たちはこれまでに、独自の手法により、約700種以上のアミノ酸置換型薬物代謝酵素バリアントを作製し、それらの活性変化を解析することで薬剤感受性を予測できる有用なPGx情報を明らかにしてきた。国内外の他の研究では、存在頻度の高い遺伝子多型に関するものがほとんどであり、低頻度多型に関しては、酵素機能変化解析はおろか、その存在そのものが未知であるという課題が残っている。そこで、未だ解明されていない薬物代謝酵素バリアントの機能変化を網羅的に明らかにし、ヒトにおける薬剤感受性の個人差を予測する研究基盤の構築を支援することで、臨床における個別化薬物療法の展開を加速したい。

    支援申請する