B5-3 メタボローム解析支援

ユニット名

発現・機能解析ユニット

支援担当者

所属 ① 東北大学 未来型医療創成センター
氏名 ① 菱沼 英史
AMED
事業
課題名 マルチオミックス・ヒューマンバイオロジー解析基盤の高度化と支援
代表機関 東北大学
代表者 木下 賢吾

支援技術のキーワード

メタボロミクス、質量分析(MS)、核磁気共鳴(NMR)、バイオマーカー探索、標的定量解析

支援技術の概要

  • ヒト由来血漿、尿、細胞など生体由来のサンプルについて、東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と同様の解析方法で実施するメタボローム解析を提供する。具体的には、核磁気共鳴装置(NMR)を用いた45代謝物以上を測定するハイスループット解析と、500種以上の代謝物を定量できるBiocrates社のMxP® Quant 500kitによる高感度質量分析装置(MS)を用いた解析を提供する。
  • 必要に応じてNMR及びMSの代謝物定量データについて、ToMMoの一般住民コホートとの比較解析を行う。
  • NMRやMSの対象となっている代謝物以外のターゲット(薬剤の代謝物など)の分析やプロテオーム解析、マウスなどのヒト以外の検体についても必要に応じて解析支援を行う。
  • 支援技術の利用例

  • NMR及びMSによる血漿メタボローム解析
  • Comparison of kit-based metabolomics with other methodologies in a large-cohort, towards establishing reference values. Saigusa D, Hishinuma E, Matsukawa N, Takahashi M, Inoue J, Tadaka S, Motoike I N, Hozawa A, Izumi Y, Bamba T, Kinoshita K, Ekroos K, Koshiba S, Yamamoto M. Metabolites, 11: 652 (2021)

    Identification of biomarkers to diagnose adverse drug reactions and diseases by metabolomics. Saigusa D, Matsukawa N, Hishinuma E, Koshiba S. Drug Metab. Pharmacokinet., 37:100373 (2021)

    jMorp updates in 2020: large enhancement of multi-omics data resources on the general Japanese population. Tadaka S, Hishinuma E, Komaki S, Motoike IN, Kawashima J, Saigusa D, Inoue J, Takayama J, Okamura Y, Aoki Y, Shirota M, Otsuki A, Katsuoka F Shimizu A, Tamiya G, Koshiba S, Sasaki M, Yamamoto M, Kinoshita K. Nucleic Acids Res., 49:D536-D544 (2021)

  • MSメタボローム解析によるがん患者のバイオマーカー探索
  • Wide-targeted metabolome analysis identifies potential biomarkers for prognosis prediction of epithelial ovarian cancer. Hishinuma E, Shimada M, Matsukawa N, Saigusa D, Li B, Kudo K, Tsuji K, Shigeta S, Tokunaga H, Kumada K, Komine K, Shirota H, Aoki Y, Motoike I, Yasuda J, Kinoshita K, Yamamoto M, Koshiba S, Yaegashi N. Toxins, 13:461 (2021)

  • NMRメタボローム解析データを利用したMGWAS
  • Identification of critical genetic variants associated with metabolic phenotypes of the Japanese population. Koshiba S, Motoike I N, Saigusa D, Inoue J, Aoki Y, Tadaka S, Shirota M, Katsuoka F, Tamiya G, Minegishi N, Fuse N, Kinoshita K, Yamamoto M. Commun. Biol., 3:662 (2020)

  • マウスの血漿メタボローム解析
  • Nrf2 plays critical roles in metabolic response during and after spaceflight. Uruno A, Saigusa D, Suzuki T, Yumoto A, Matsukawa N, Yamazaki T, Saito R, Taguchi K, Suzuki M, Suzuki N, Otsuki A, Katsuoka F, Hishinuma E, Koshiba S, Tomioka Y, Shimizu R, Okada R, Shirakawa M, Kensler T W, Shiba D, Yamamoto M. Commun. Biol., 4: 1381 (2021)

    支援担当者の研究概要

    生体内の代謝物の網羅的解析手法であるメタボロミクスは、ヒトの表現型の変化を比較的よく反映すると考えられており、バイオマーカー探索研究に大きく貢献している。しかし、臨床現場への応用に至った例は極めて少ないのが実状である。そのため、大規模コホート研究で集積された検体を活用して生体内のメタボロームプロファイルを明らかにすることは、疾患の診断などの種々のバイオマーカーの同定に非常に重要である。私たちはこれまでに、ToMMoの大規模コホート研究から得られた多種類の検体をバイオバンクに保管し、その血漿検体を用いてメタボローム解析を行ってきた。これまで、NMR装置による解析は数万人規模、標的メタボローム解析キット(MxP® Quant 500kit)を用いた血漿メタボローム解析は数千人規模にのぼり、その結果はToMMoのデータベースである日本人多層オミックス参照パネル(jMorp;https://jmorp.megabank.tohoku.ac.jp/)に一般公開している。また2018年に東北大学未来型医療創成センター(INGEM)が設立され、東北大学病院やToMMoと連携し、クリニカルバイオバンクの構築を行い、東北大学病院の患者由来の検体のクリニカルシークエンスやメタボローム解析を行っている。特に、がんをはじめとした患者由来の血漿検体のメタボローム解析も勢力的に実施しており、これらをToMMoのコホート検体のデータと比較解析することで、婦人科がんの診断や治療効果の予測に有用と考えられるバイオマーカーを特定している。私たち独自のメタボローム解析手法によるハイスループットかつ定量精度の高い分析を通して、これまで未知であった様々な疾患の診断や層別化に有用なバイオマーカー探索を支援したい。

    支援申請する