所属 | ① 産業技術総合研究所 人工知能研究センター | |
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氏名 | ① 富井 健太郎 | |
AMED 事業 |
課題名 | ライフサイエンス研究加速のためのバイオインフォマティクス研究 |
代表機関 | 産業技術総合研究所 | |
代表者 | 富井 健太郎 |
クライオ電子顕微鏡、構造モデリング、フレキシブルフィッティング、AlphaFold、FORTE
当グループの開発技術ならびに既存技術を用いて、タンパク質立体構造モデリングの支援を実施する。主要な開発技術として、プロファイル比較に基づく高感度・高精度なタンパク質類似性検索法FORTEシリーズがある。FORTEによって、対象タンパク質の立体構造モデリングに適した鋳型タンパク質とのアラインメントが計算され、この結果に基づき立体構造モデルが構築される。近年のタンパク質立体構造予測実験(CASP12)では、FORTEシリーズを用いたアプローチがタンパク質複合体のモデリングにも有益であることも示された。また最近、クライオ電子顕微鏡観測によって得られた密度マップに基づく立体構造モデリングにおいて、FORTEシリーズとフレキシブルフィッティングを組み合わせたアプローチの有効性も、当グループでのベンチマークにより、示された。FORTEシリーズや当グループの他開発技術、あるいはAlphaFoldなどを利用して得られる構造モデルを初期値として利用し、様々な状況に応じた立体構造モデリングの支援を実施する。
クライオ電子顕微鏡による観測で、部分的または全体的に中程度の解像度までの密度マップしか得られない場合がある。こうした場合でも、FORTEシリーズを用いたモデリングやAlphaFoldなどにより得られる構造モデルと、分子動力学シミュレーションを利用したフレキシブルフィッティングを組み合わせることで、密度マップに対する適合性とタンパク質らしさの両面を考慮したモデリングが可能である。こうしたアプローチは、ミトコンドリア外膜に存在するトランスロケーターの一つであるSAM(sorting and assembly machinery)複合体の構造解析(下図)などに適用されている。
タンパク質のアミノ酸配列情報や立体構造情報、発現情報などは急増の一途をたどっている。こうした大規模データを効果的に取り扱い、そこから生物学的知識を発見・抽出するための計算科学的手法の開発を行うとともに、開発手法をはじめとするバイオインフォマティクス技術を応用し、様々なライフサイエンス研究の推進を支援している。これまでに開発したプロファイル比較に基づく高感度・高精度なタンパク質類似性検索法FORTEを用いて、従来の配列類似性検索手法では検出できなかったII型酵素ペルオキシソーム因子PEX1のN末端ドメイン(下図)や赤痢アメーバにユニークな酵素輸送受容体CPBFを構成するPPC様ドメインなどの同定および構造予測を行った。またクライオ電子顕微鏡データに基づいて、FORTEを使ったモデリングと分子動力学シミュレーションを使ったフレキシブルフィッティングによる立体構造モデリングを支援した。