D7-3 タンパク質クライオ電子顕微鏡構造解析支援

ユニット名

ヒット化合物創出ユニット

支援担当者

所属 ① 北海道大学 大学院薬学研究院
② 北海道大学 大学院薬学研究院
③ 北海道大学 大学院薬学研究院
氏名 ① 前仲 勝実
② 喜多 俊介
③ 野村 尚生
AMED
事業
課題名 クライオ電子顕微鏡等の立体構造・物理化学解析を基軸とした統合的創薬支援
代表機関 北海道大学
代表者 前仲 勝実

支援技術のキーワード

クライオ電子顕微鏡、単粒子解析、microED、電子線トモグラフィー

支援技術の概要

平成23年度から北海道大学薬学研究院に設立された創薬科学研究教育センター(北大創薬センター)を拠点とし、「化合物ライブラリーを活用した創薬等最先端研究・教育基盤の整備」から、引き続き「創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業(PDIS)」、本事業の前身である「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(BINDS)」により、一気通貫した創薬研究支援を11年間遂行してきた。本事業においても、この実績を踏襲、かつ発展させ創薬研究支援を行う。本拠点で目指す一気通貫した“創薬シーズの発掘から前臨床・企業導出までの全ステージ”をシームレスに展開するため、創薬研究支援を実施する。

当ユニットでは、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析、電子線トモグラフィー、microEDについてグリッド作製とクライオ電子顕微鏡を用いた撮影の支援を行う。

支援内容

本拠点で運用される3台のクライオ電子顕微鏡解析装置について、立体構造解析技術支援を行う。これを支援するにあたり、Oxford大学と研究協力体制を築き、研究者を派遣することで技術交流を図っている。また、国内では阪大蛋白研、高エネ研と研究協力体制を構築し、遠隔での測定や解析などをすでに実施している。また、北大人獣共通感染症国際共同研究所には300kVクライオ電子顕微鏡をBSL3に世界で初めて導入しており、これらを効率よく使用する環境整備する。

1) 単粒子解析
Vitrobot Mark IV もしくはEM GP2を用いたグリッド作製、クライオ電子顕微鏡Glacios(加速電圧:200keV、カメラ:FalconIII)を用いたスクリーニングとKriosG4(加速電圧:300keV、カメラ:K3)を用いたデータセットの収集を支援する。

2) microED
低分子―中分子化合物について、グリッド作製とクライオ電子顕微鏡Glacios(加速電圧:200keV、カメラ:Ceta)を用いたデータセットの収集を支援する。 

3) 電子線トモグラフィー
Vitrobot Mark IV もしくはEM GP2を用いたグリッド作製とクライオ電子顕微鏡KriosG4(加速電圧:300keV、カメラ:K3)を用いた撮像を支援する。BSL3のKrios G4については、現在運営委員会設置の準備中であるが、将来的には創薬相談会による面談後、運営委員会の承認を得て、希望者が利用できるように体制を整えることを目指している。クライオFIB-SEMや細胞切片調製技術などの関連技術も連動して開放する。

支援技術の利用例

現在までに、がん、難治性疾患、新興再興感染症に重点をおき、標的タンパク質の立体構造解析を進めている。特に新型コロナウイルスのタンパク質に注力しており、新型コロナウイルスspike蛋白質と中和抗体複合体やGPCR等の単粒子解析について報告している(Ozawa et al., MAbs, 14(1), 2022, Heo et al., in press)。
microEDについても、Ni錯体の構造解析を支援し、論文として発表している(Doi et al., ChemCatChem, 13, 2086-2092, 2021)。
これまでに横浜市立大、感染研、京都大、千葉大、群馬大、北里大、高エネ研、(北大理、北大人獣)のグループの構造解析を支援してきた。高エネ研(千葉大)とは研究協力体制を構築し、遠隔での測定や解析などをすでに実施している。

支援担当者の研究概要

「化合物ライブラリーを活用した創薬等最先端研究・教育基盤の整備」から「創薬等支援技術基盤プラットフォーム(PDIS)」、「創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)」の約11年間の支援活動によって、シームレスかつ総合的な創薬研究技術や機器解放などにより支援環境を整備し、特に新型コロナウイルス感染症に対する治療薬開発において、中和抗体、中分子化合物、低分子化合物と広いモダリティに対して、創薬研究に重要な役割を担うことに成功した。現在も臨床へ向けた薬剤開発を継続しており、クライオ電子顕微鏡解析を主軸とした立体構造解析により薬効の理解、さらには東大創薬機構構造展開ユニットとの連携によるADME評価を行い、連携企業を見出している。また、化合物ライブラリーの整備においては、管理運用体制を充実させ、本邦では最も多くの既存薬化合物(5000化合物以上)を有する拠点となっている。同時に、天然物やペプチド等を含む中分子化合物ライブラリー(3000化合物以上)の整備も進め、北里大学大村天然物ライブラリーのコア化合物、長崎大学および東京大学からも管理運用を引き受け、広く創薬課題へと提供できるシステムも構築している。その中でも2000中分子化合物については、膜透過等の物性評価ずみの付加価値の高いHKTLライブラリーを整備することに成功している。このように、オリジナリティーの高い実践的創薬研究を行い、特徴ある化合物ライブラリーの整備、クライオ電子顕微鏡解析の高い技術をベースに医薬品候補品の企業導出までの成果を上げてきた実績を発展させ、クライオ電子顕微鏡解析を基軸とした創薬ターゲットタンパク質の立体構造解析や物理化学解析を行うことのできる特徴あるヒット化合物創出ユニット拠点として、主に新興再興感染症や難治性疾患等を対象に、製薬企業で実施が難しい最先端基礎研究の成果に基づくアカデミア発創薬を目指す。

支援申請する