所属 |
① 京都大学 大学院薬学研究科 ② 京都大学 大学院薬学研究科 ③ 京都大学 大学院薬学研究科 |
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氏名 |
① 竹本 佳司 ② 中 寛史 ③ 南條 毅 |
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AMED 事業 |
課題名 | 精密合成技術に基づくハイブリッド型ニューモダリティ創製の創薬支援 |
代表機関 | 京都大学 | |
代表者 | 竹本 佳司 |
ハイブリッドモダリティ、分子触媒、重水素化、ペプチド分子編集、N-グリコシル化
独自の分子触媒技術を利用してハイブリッド化素子(低分子医薬品、脂肪酸、ペプチド、糖、核酸)の構造展開と各素子を連結させるハイブリッド化を支援する。具体的には、低分子および中分子化合物を中心に、その中間体や最終化合物に直接重水素やハロゲン等の官能基を部位特異的に導入する分子触媒あるいは分子変換技術を提供する。また反応不活性なことからこれまでハイブリッド化に利用されてこなかったアミドやアルキル側鎖を連結基として使えるハイブリッド触媒反応を開発しており、不活性基を介して医薬品やペプチドを糖鎖修飾する合成技術を提供する。これら合成した多彩なハイブリッド分子をライブラリー化することで、物性や薬物動態改善の支援を実施する。
(1)第一級あるいは第二級アルコールのα位選択的な重水素化技術
(2)立体配座の規制に重要なペプチド主鎖の第二級アミドN-Hをハロゲン化する技術
(3)鎖状及び環状オリゴペプチドをデヒドロペプチドに変換する技術
(4)オリゴペプチドのアルキル側鎖を位置特異的に官能基化する技術
(5)オリゴペプチドを位置特異的に切断する技術
(6)化学修飾が困難なアミドを介して医薬品やペプチドに糖鎖を連結させるハイブリッド化技術
(7)リボース誘導体と核酸塩基をカップリングさせるN-リボシル化技術
(8)α-ケトカルボン酸とオレフィンをハイブリッド化するチオエステル化技術
(9)カルボン酸とオレフィンをハイブリッド化するヒドロアシル化技術
(1)重水素化
高血圧治療薬ロサルタンに含まれるヒドロキシ基のCYP2C9による代謝は医薬品の有効血中濃度を決定する重要な因子である。ヒドロキシ基α位への重水素ハイブリッド化はロサルタンと複数の代謝物の濃度を制御する有効な手段と期待されるが、その効率的方法は存在しなかった。我々の開発したイリジウム触媒プロセスを利用することで、市販のロサルタンカリウムを原料として直接かつ効率的にヒドロキシ基α位のみに重水素をハイブリッド化することに成功した。実際、ヒドロキシ基α位が重水素化されたロサルタンは顕著に代謝速度が遅延されることが初めて実証され、ヒドロキシ基含有医薬分子の開発に対して有効な知見を与えた。
(2)ペプチド分子編集
シクロスポリンは11個のアミノ酸からなる環状ペプチドだが、1つの第二級ヒドロキシ基以外はすべてアルキル側鎖であるため所望の位置でのハイブリッド化に課題があった。我々が開発したアミドN-Hのクロロ化技術に脱離反応を組み合わせることで、汎用性の高いデヒドロペプチドへの変換法を確立した。この操作により、様々な求核剤の導入が可能になるため多彩なハイブリッドモダリティの合成が可能である。
(3)アミドー糖ハイブリッド化
抗悪性脳腫瘍剤テモゾロミドは難水溶性のため生物学的利用能が極めて低く、また化学修飾可能な官能基が第一級アミドしかないためプロドラッグ化が困難な医薬品の1つであった。しかし、我々が開発した二元触媒系を利用することで第一級アミドに糖鎖を連結させることに成功した。また、このハイブリッド化により水溶性が格段に向上することを証明し、導入する糖鎖による臓器特異的なDDSへ展開する可能性を示した。