E5-1 創薬標的分子探索支援

ユニット名

モダリティ探索ユニット

支援担当者

所属 ① 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所
② 信州大学 学術研究院(農学系)
氏名 ① 細谷 孝充
② 喜井 勲
AMED
事業
課題名 ヒット化合物の迅速高機能化技術の高度化による生命科学・創薬研究支援
代表機関 東京医科歯科大学
代表者 細谷 孝充

支援技術のキーワード

分子プローブ化、標的同定、光親和性標識プローブ、クリックケミストリー、抗体薬物複合体

支援技術の概要

スクリーニングヒット化合物の標的分子が未知の場合、独自に開発したジアジドプローブを用いる光親和性標識法などの標的分子同定技術に利用可能な分子を設計、または合成し、標的同定を支援する。また、ヒット化合物またはその誘導体を用いた抗体薬物複合体 (ADC) 開発支援にも取り組む。これにより、化合物が潜在する毒性や薬物送達等の課題を克服することで、より多くの化合物を導出に導くための多角的な支援を実施する。これらに先んじて、ヒット化合物への機能性官能基の導入可能部位の探索のための構造活性相関の検討を必要に応じて実施する。

支援技術の利用例

1. フェノタイプアッセイなどの、化合物ライブラリーを用いるスクリーニングから見出されたヒット化合物の標的分子が不明である場合、光親和性標識プローブを開発支援する。
2. 高活性ながら毒性や動態に課題を持つ化合物を保有する場合、当該化合物から誘導される抗体に連結可能な分子を設計、合成する。これを適切な抗体に連結することでADCを開発支援する。
3. ヒット化合物の改変に課題がある場合、改変可能部位探索に向けた構造展開を合わせて行う。

支援担当者の研究概要

我々はこれまで、元素の特性を活かした有機合成技術の高度化により、生命科学研究に資する方法論の開発を進めてきた。この過程で開発された独自の標的タンパク質同定技術やPETプローブ化技術などを用いて、生物学・医学系研究者らと共同で多数の創薬・生命科学研究課題に取り組んできた。

1. ジアジドプローブ法
我々は以前に、2種のアジド基を区別して利用することで、ヒット化合物の標的タンパク質を明らかにできる「ジアジドプローブ」を用いる光親和性標識法の開発に成功した(Org. Biomol. Chem. 2004, 2, 637)。このジアジドプローブ法では、ヒット化合物の構造をもとに、最小限の構造改変によって、芳香族アジド基と脂肪族アジド基を導入したプローブ分子を開発する。このプローブ分子を標的タンパク質を含む細胞などに作用させ、光照射すると、芳香族アジド基が選択的に反応し、標的タンパク質中の求核性アミノ酸残基と共有結合を形成する。このとき、脂肪族アジド基は光反応せずに残存するため、アルキンやホスフィンなどを用いるクリックケミストリーにより、光ラベル化された標的タンパク質を、解析に利用できる蛍光色素やペプチドタグなどで標識できる。このとき、アジド基が小さく、無極性の官能基であることから、ヒット化合物の構造をほとんど変えることなく、活性を保持したプローブを開発しやすい点が本手法の特長である。現在、光親和性標識プローブの開発を迅速化するための様々な有機合成技術の高度化も進めている。

2. タンパク質の化学修飾技術
我々はこれまで、生体分子等の化学修飾に有用な独自のクリックケミストリーの高度化の過程で、タンパク質を化学修飾するための独自技術を多数開発し(Chem. Commun. 2021, 57, 899; Chem. Commun. 2019, 55, 3556; Chem. Commun. 2018, 54, 7904; Chem. Commun. 2018, 54, 3705)、これらを活用することで、多機能抗体やADCなどの開発に現在取り組んでいる。さらに、抗体連結に向けたヒット化合物の自在改変に有用な技術を多数開発しており(Nat. Catal. 2021, 4, 1080; Bull. Chem. Soc. Jpn. 2020, 93, 230-248)、様々な化学構造を有するヒット化合物を抗体に連結可能である。

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