F7-4 毒性/安全性評価支援(in vivo)

ユニット名

薬効・安全性評価ユニット

支援担当者

所属 ① 東京大学 大学院薬学系研究科
氏名 ① 楠原 洋之
AMED
事業
課題名 新規薬効成分の薬物動態解析と体内動態特性予測の支援
代表機関 東京大学
代表者 楠原 洋之

支援技術のキーワード

病理画像、肝臓、表現学習、深層学習

支援技術の概要

Chemical-Leveraged modelは、臓器のヘマトキシリン染色画像の病理学的特徴を網羅的かつ恣意性なく数値化する深層学習モデルであり、楠原の研究室にて水野忠快助教が開発した。上述のオミクスデータを対象とした研究より着想した「多様な化合物による多様な病理画像を学習したモデルは多様な病理像を恣意性なく数値化可能」というコンセプトの下で、150種類以上の化合物を複数濃度・複数時点で処理した際のラットの毒性情報を収載した大規模データベースOpen TGGATEsを対象に学習を進めた表現学習モデルである。病理画像をさながらオミクスデータのような多変量へと変換するため、病理所見などのスパースなラベル群よりも病理画像の情報を多く抽出していると考えられ、引き続く機械学習などのモデル構築に有用な情報を提供する。例えば解析対象薬物が肝臓においてどのような分子機序の薬物と同じ作用を及ぼしているかの予測や、29週時点での病理所見を8週までの画像から予測すること等に成功している。同モデルを用いることで、どのような毒性特性を持つかわからない新規薬物の実験動物の毒性評価において、病理医をはじめとすると評価者の負担軽減や支援を行う。本解析は楠原の研究室で実施する。

支援技術の利用例

一般に病理画像は、データの取得後、病理医やパソロジストにより人力で評価される。本支援技術はこの評価の部分を機械学習モデルにより迅速化・高度化するものである。具体的な利用例としては以下のケースが挙げられる。
1. 肝病理画像中の異常所見の検出
Hotelling's T-squaredなどに基づき、病理画像が健常な病理像と異なるか否かについて統計的に判断可能。
2. 既存化合物との病理画像レベルでの類似性評価
TGGATEs中に存在する150種類の化合物、あるいは持ち込みの化合物と病理画像レベルでの類似性を評価可能。
3. 代表的な病理所見の自動判別
8種類の代表的な肝機能障害の病理所見について有無を自動的に判別可能。

支援担当者の研究概要

当研究室では、薬物の有害事象の発現リスク評価や薬物のリポジショニングなど、医薬品開発上の課題を克服するため、薬物の細胞応答を評価した包括的なオミクスデータを対象とした研究を進めてきた。薬物の作用を複合的なものと捉え、網羅的遺伝子発現量データで記述し、因子分析を改変した独自手法を適用することで、薬物の作用を「分離して理解する」ことを実現している。開発した解析手法の原理は極めて新規性の高いものであり、東京大学と企業との共同特許出願に至っている(Mizuno T, 2019, Sci Rep.)。また、本解析手法を利用することで、複数の薬物について、潜在的な作用を新たに同定することにも成功し、その有用性を実証している(Morita K, 2020, Sci Rep.; Nemoto S, 2021, J Nat Prod.)。
研究室HP:https://dotai.f.u-tokyo.ac.jp/ja/index.html

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